複数導線の導通検査方法、これに用いる接続装置および検査装置
（書誌＋要約＋請求の範囲）
(19)【発行国】日本国特許庁（ＪＰ）
(12)【公報種別】公開特許公報（Ａ）
(11)【公開番号】特開平５−３２２９５４
(43)【公開日】平成５年（１９９３）１２月７日
(54)【発明の名称】複数導線の導通検査方法、これに用いる接続装置および検査装置
(51)【国際特許分類第５版】
G01R 31/02 8117-2G
【審査請求】未請求
【請求項の数】４
【全頁数】５
(21)【出願番号】特願平４−１２６４６９
(22)【出願日】平成４年（１９９２）５月１９日
(71)【出願人】
【識別番号】００００００２８４
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目１番２号
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
【住所又は居所】大阪市中央区平野町四丁目１番２号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 富徳
【住所又は居所】大阪市中央区平野町四丁目１番２号 大阪瓦斯株式会社内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎 （外１名）
(57)【要約】
【目的】 多芯シールドケーブルの各心線の両端部を対応して導通検査を良好な作業性で行うこと。
【構成】 シールドケーブルの外部導体と複数の各心線との間に、接続装置により相互に値が異なるインピーダンスを与え、ケーブルの他方端部では、外部導体と各心線との間のインピーダンスを検査装置で測定し、これによってケーブルの両端部における各心線の対応関係、したがって導通検査を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項１】 複数の導線の一方端部で、それらの導線のうちの予め定める導線と、残余の複数の各導線との間に、予め定める相互に異なるインピーダンスを有するインピーダンス素子を接続し、導線の他方端部で、前記予め定める導線と前記残余の各導線との間のインピーダンスを測定し、この測定したインピーダンスと前記インピーダンス素子を対応させることによって、前記残余の各導線の一方端部と他方端部との導通を検査することを特徴とする複数導線の導通検査方法。
【請求項２】 前記インピーダンス素子は、コンデンサであることを特徴とする複数導線の導通検査方法。
【請求項３】 一方端部が共通に接続され、相互にインピーダンスが異なる複数のインピーダンス素子と、前記一方端部に接続されるクリップと、前記インピーダンス素子の各他端部にそれぞれ接続される複数のクリップとを含むことを特徴とする接続装置。
【請求項４】 ４つの辺のうち、３つの片にインピーダンス素子が接続されているブリッジと、ブリッジの残余の１辺に接続される２つのクリップと、ブリッジに交流信号を与える交流信号源と、ブリッジの出力を検出する検出手段とを含むことを特徴とする検査装置。
詳細な説明
【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、たとえば複数の心線が相互に電気的に絶縁されて構成されるケーブルの前記心線の両端部の導通状態を検査するためなどに有利に実施することができる複数導線の導通検査方法、これに用いる接続装置および検査装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】典型的な先行技術は図２に示されている。電気信号を有するケーブル１の一方端２と他方端３とにおいて、相互に電気的に絶縁された心線４の一方端４ａと他方端４ｂとを相互に対応して導通していることを検査するために、ケーブル１の一方端２と他方端３とに検査員５，６が配置される。このケーブル１はシールド線であるものとし、その外導体である接地導体７を有する。ケーブル１の一方端２における検査員５は、一方のクリップ８によって接地導体７に接続し、このクリップ８にライン９を介して接続されているクリップ１０を、複数の心線４の端部４ａの１つに接続／離脱を繰返しながらオン／オフ信号を手動によって送信する。ケーブル１の他方端３では、もう１人の検査員６がテスタなどの抵抗計１１を用いて、抵抗を測定する。この抵抗計１１は抵抗を指示する指針１２を有する。抵抗計１１の一方の接続端子はライン１３を介して接地導体７に接続される。抵抗計１１の他方端１４は、複数の心線４の他方端４ｂの任意の１つを順番に接続してゆき、その接続状態で、検査員６は抵抗計１１の指針１２の振れを確認し、これによってケーブル１の前記一方端でクリップ８，１０およびライン９を介してオン／オフされている心線４のうちの１つの一方端４ａと、そのケーブル１の他方端３で検査員６がライン１４を介してクリップ１５で接続している心線４のうちの１つの他方端４ｂとの導通状態を知ることができる。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】このような図２に示される先行技術では、ケーブル１の心線４の導通検査のために、２人の作業者５，６を必要とし、さらに、これらの検査員５，６の相互の連絡を取るために、さらにもう１人の検査員１６を必要とすることもある。
【０００４】検査員６は抵抗計１を用いてその指針１２の振れを見ながら、また検査員６は、もう１人の検査員５と無線機などを用いて相互に連絡を取りつつ作業を行わなければならず、測定のための多くの労力を必要とし、導通検査のための時間が長くなる。
【０００５】またこのような先行技術では特にケーブル１が長距離にわたって設けられているときには、作業者５における作業のタイミングと、もう１人の検査員６による作業のタイミングとが取りにくくなり、導通検査のための作業性が低下する。
【０００６】またこのような先行技術では検査員５はクリップ１０を心線４のうちの１つの一方端４ａに接続／離脱を繰返してオン／オフ信号を送信しなければならず、したがって作業性が悪い。また作業者６は抵抗計１１による抵抗の測定時に、ノイズによって誤測定を生じやすいという問題がある。作業能率を向上するために、クリップ１０と心線４の１つの一方端４ａとの接触／離脱を短い周期で迅速に繰返すと、抵抗計１１の指針１２の振れが小さくなり、導通検査を正確に行うことができなくなってしまう。したがってクリップ１０と心線４の１つの一方端４ａとの接続／離脱をゆっくり行う必要があり、これによって導通検査の時間が長くなるという問題がある。
【０００７】本発明の目的は、ケーブルの複数の心線などのような複数導通の導通検査を、良好な作業性で、能率よくかつ性格に行うことができるようにした複数導線の導通検査方法、これに用いる接続装置および検査装置を提供することである。
【０００８】
【課題を解決するための手段】本発明は、複数の導線の一方端部で、それらの導線のうちの予め定める導線と、残余の複数の各導線との間に、予め定める相互に異なるインピーダンスを有するインピーダンス素子を接続し、導線の他方端部で、前記予め定める導線と前記残余の各導線との間のインピーダンスを測定し、この測定したインピーダンスと前記インピーダンス素子を対応させることによって、前記残余の各導線の一方端部と他方端部との導通を検査することを特徴とする複数導線の導通検査方法。
【０００９】また本発明は、前記インピーダンス素子は、コンデンサであることを特徴とする複数導線の導通検査方法である。
【００１０】また本発明は、一方端部が共通に接続され、相互にインピーダンスが異なる複数のインピーダンス素子と、前記一方端部に接続されるクリップと、前記インピーダンス素子の各他端部にそれぞれ接続される複数のクリップとを含むことを特徴とする接続装置である。
【００１１】また本発明は、４つの辺のうち、３つの片にインピーダンス素子が接続されているブリッジと、ブリッジの残余の１辺に接続される２つのクリップと、ブリッジに交流信号を与える交流信号源と、ブリッジの出力を検出する検出手段とを含むことを特徴とする検査装置である。
【００１２】
【作用】本発明に従えば、たとえば多芯シールドケーブルなどのような複数の導線の一方端部で、接続手段によって、それらの導線のうちの予め定める導線、たとえばシールドケーブルにおける外部導体と、残余の複数の各導線との間に、予め定める相互に異なるインピーダンスを有するインピーダンス素子、たとえば相互に異なる静電容量を有するコンデンサを接続し、導線の他方端部では、検査装置たとえばデソーティ・ブリッジやウィーン・ブリッジなどの交流ブリッジによって、前記予め定める導線と前記残余の各導線との間のインピーダンスを測定し、この測定したインピーダンスと前記インピーダンス素子を対応させることによって、前記残余の各導線の一方端部と他方端部との導通を検査することができる。
【００１３】
【実施例】図１は、接続装置２１と検査装置２２との電気的構成を具体的に示す電気回路図である。多芯のシールドケーブル２３は、シールド線である外部導体２６と電気絶縁物によって被覆された複数の心線２９とを有する。ケーブル２３は、たとえば２〜３Ｋｍもの長距離にわたって敷設されている。ケーブル２３の一方端部２４であり、心線である導線２９の一方端部を、参照符３０，３１，３２，３３でそれぞれ示す。ケーブル２３の他方端部２５で、心線２９の他方端部を、参照符３７，３８，３９，４０でそれぞれ示す。ケーブル２３の一方端部２４には、接続装置２１が配置され、他方端部２５には検査装置２２が設けられている。
【００１４】接続装置２１は、一方端部が共通に接続され、相互に静電容量が異なる複数のコンデンサ５３，５４，５５，５６と、前記コンデンサ５３，５４，５５，５６の一方端部に接続されるクリップ４４と、前記コンデンサ５３，５４，５５，５６の各他方端部にそれぞれ接続される複数のクリップ４５，４６，４７，４８とから成る。
【００１５】コンデンサ５３，５４，５５，５６は、心線２９の静電容量や接続部分のノイズによる悪影響を受けない程度に、相互に十分大きな差異をもって異なる静電容量Ｃ１〜Ｃ５に選ぶ。たとえば、各心線２９の静電容量が１００ｐＦのとき、Ｃ１＝１００μＦ、Ｃ２＝２００μＦ、Ｃ３＝３００μＦ、Ｃ４＝４００μＦ、Ｃ５＝５００μＦとする。クリップ４５，４６，４７，４８は、接続装置２１のコンデンサ５３，５４，５５，５６を、心線２９の各一方端部に着脱可能に接続するために、ワニロクリップとする。
【００１６】接続装置２１側の各クリップ４５〜４８が、静電容量５３〜５６にそれぞれ対応していることは、予め定められているものとする。接続装置２１は導通検査に先立って、ケーブル２３の一方端部２４に予め接続しておく。接続装置２１は、電池などを有していないので、電池の消耗などを考慮する必要がなく、取扱いが容易である。
【００１７】ブリッジの接続点７４，７５にはブリッジの平衡状態を測定するための交流電圧計６４が接続される。その測定結果は、指示計７６によって表示される。接続点７４，７５の出力は増幅回路６５に与えられ、スピーカ６６によって音響化される。検査装置２２のクリップ４９，５０は、外部導体２６の他方端部２８と心線２３の他方端部３７，３８，３９，４０のうちの任意の１本に着脱可能に接続し、外部導体２６と心線２９の任意の１本との間の静電容量を測定するために、ワニロクリップとする。
【００１８】導通検査にあったてはまず、ケーブル２３の一方端部２４において、クリップ４４と外部導体２６の一方端部２７と接続し、クリップ４５，４６，４７，４８と任意の各心線の一方端部３０，３１，３２，３３とをそれぞれ接続する。次にケーブル２３の他方端部２５において、外部導体２６の他方端部２８と検査装置２２のクリップ４９とを接続し、さらにもう一方の検査装置２２のクリップ５０を心線２９の任意の１本に、たとえば他方端部３８に接続する。
【００１９】クリップ４９，５０の間に接続され、ケーブル２３を介する接続装置２１のコンデンサ５３，５４，５５，５６のうちの１つと、可変コンデンサ６０、抵抗６１，６２とはブリッジ７１を構成する。可変コンデンサ６０、抵抗６１，６２はブリッジ７１の３辺の各辺に設けられている。クリップ４９，５０にケーブル２３を介して接続されるコンデンサ５３，５４，５５，５６は、ブリッジ７１の残余の１辺を構成する。
【００２０】ブリッジ７１の対角線上の接続点７２，７３には交流信号源６３が接続される。ブリッジ７１の他の対角線上の接続点７４，７５には検出手段６７が接続される。検出手段６７は接続点７４，７５の２点間の電圧を検出する。交流電圧計６４によって測定される指示計７６の電圧測定値が最小となるように可変コンデンサ６０の容量を変化させる。指示計７６によって示される電圧値が最小となったとき、スピーカ６６の音響もまた最小となる。そのとき、クリップ４９，５０の２点間の静電容量が数１から演算して求められる。
【００２１】ブリッジの可変コンデンサ６０の静電容量をＣ、抵抗６１，６２の抵抗値をＲ１，Ｒ２とすると、クリップ４９，５０の２点間の静電容量Ｃｘは、【００２２】
【数１】
【００２３】のように表される。
【００２４】検査装置２２のクリップ５０を、心線２９６の他方端部３８に接続した状態では、数１から計算で求められる静電容量は、コンデンサ５４の静電容量Ｃ２となる。したがって、このブリッジからＣｘを計算で求めることによって、クリップ５０に接続されている心線２９の他方端部３８は、コンデンサ５４に対応したクリップ４６と接続されている。心線２９の一方端部３１に対応していることを知ることができる。
【００２５】さらに、検査装置２２のクリップ４９をが外部導体２６の他方端部２８に接続した状態のままで、検査装置２２のクリップ５０を心線２９の残余の他端部３７，３９，４０のうちの１つに接続し、前述と同様にしてブリッジによる静電容量Ｃｘの測定を行い、前記心線２９の一方端部３０，３２，３３のうち１つと対応していることを検査する。
【００２６】本発明はケーブル２３および心線２９に関連して実施されるだけでなく、その他の複数本の導線に関連して広範囲に実施することができる。
【００２７】他の実施例として、５３，５４，５５，５６の静電容量をＣ１，Ｃ２，Ｃ３，Ｃ４，Ｃ５とすると、【００２８】
【数２】
【００２９】で表されるような値に選んでもよい。たとえば、Ｃ１＝１００μＦ、Ｃ２＝２００μＦ、Ｃ３＝４００μＦ、Ｃ４＝８００μＦ、Ｃ５＝１６００μＦとする。またＣ１〜Ｃ５は別の値に選んでもよい。ブリッジは、その他の構成であってもよい。
【００３０】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、多芯のケーブルなどを構成する複数の導線の一方端部では、それらの導線の予め定める導線と残余の複数の各導線との間に、前記残余の各導線毎に相互に異なるインピーダンスを有するインピーダンス素子を接続し、導線の他方端部では、前記予め定める導線と前記残余の各導線との間のインピーダンスを測定し、これによって前記残余の各導線の一方端部と他方端部の導通を検査することができるので、少ない検査員で容易に前記残余の各導線の導通検査を行うことができる。
【００３１】また、本発明によれば、接続装置には電源を使用していないので、装置が安価であり、検査装置には交流ブリッジを使用しているのでノイズの影響を最小限におさえ、容易に正確な測定を行うことができるとともに、ケーブルの一方端での接続装置の接続作業後、後日、ケーブルの他方端で導通を検査できる。
