特許事務所

2段膜分離システムを用いたSNGの製造方法および製造装置

(書誌+要約+請求の範囲)

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2000−119669(P2000−119669A)
(43)【公開日】平成12年4月25日(2000.4.25)
(54)【発明の名称】2段膜分離システムを用いたSNGの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類第7版】
C10L 3/10
C07C 7/144
C10K 3/00
【FI】
C10L 3/00 B
C07C 7/144
C10K 3/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願平10−292363
(22)【出願日】平成10年10月14日(1998.10.14)
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 富徳
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】漆崎 靖昌
【住所又は居所】大阪府大阪市東成区中道1−4−2 大阪ガスエンジニアリング株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 真一
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(74)【代理人】
【識別番号】100099841
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 恒彦
【テーマコード(参考)】
4H006
4H060
【Fターム(参考)】
4H006 AA02 AA04 AB44 AD19 BD21 BD34 BD53 BD60 BD82 BD84
4H060 AA01 AA02 BB32 BB33 BB34 CC13 CC14 DD02 EE04



(57)【要約】
【課題】 2段膜分離システムを用いたSNGの製造方法において、総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGを継続的に安定して製造できるようにする。
【解決手段】 第1段膜分離装置9において、改質ガスをメタンの含有割合が高められた第1段メタンリッチガスと、炭酸ガスの含有割合が高められた第1段炭酸ガスリッチガスとに分離する。第1段メタンリッチガスを増熱器12に送り、そこで熱量調整して目的とするSNGを製造する。通常状態では、第1段炭酸ガスリッチガスを主供給ライン9cを通じて第2段膜分離装置10に送り、そこで第2段メタンリッチガスと第2段炭酸ガスリッチガスとに再度分離する。第2段膜分離装置10が使用不能の場合は、第1段炭酸ガスリッチガスを第2段膜分離装置10へは流さずに、副供給ライン9dを通じて排出路10bへ直接流れるように設定する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】改質ガス等を第1段膜分離装置に送り、非透過ガスとしてメタンリッチガスを得て、LPG増熱装置により増熱して総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGとする一方、第1段膜分離装置の透過ガスを第2段膜分離装置に送り、第2段膜分離装置の非透過ガスを還流させて改質ガス等と混合させ、この混合ガスを第1段膜分離装置に送り、第2段膜分離装置の透過ガスとして炭酸ガスリッチガスを得る還流式2段膜分離システムを用いてSNGを製造する方法において、第2段膜分離装置が使用できない場合には、第1段膜分離装置の透過ガスを第2段膜分離装置へ送っていたのを切り替えて副供給ラインへ流す一方、第1段膜分離装置の非透過ガスをLPG増熱することを特徴とする総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造方法。
【請求項2】改質ガス等の一部を水添脱硫用のリサイクルガスに供することにより改質ガス等を得ることを特徴とする請求項1に記載の総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造方法。
【請求項3】改質ガス等が改質ガスまたはメタン化ガスまたは改質ガスとメタン化ガスとの混合ガスである請求項1または2に記載の総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造方法。
【請求項4】第1段膜分離装置において透過係数比が13以上の膜を用いることを特徴とする請求項1、2または3に記載の総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造方法。
【請求項5】通常時におけるSNG中の炭酸ガス濃度が2.0以下であることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造方法。
【請求項6】改質ガス等を第1段膜分離装置に送り、非透過ガスとしてメタンリッチガスを得る一方、第1段膜分離装置の透過ガスを第2段膜分離装置に送り、第2段膜分離装置の非透過ガスを還流させて改質ガス等と混合させ、この混合ガスを第1段膜分離装置に送り、第2段膜分離装置の透過ガスとして炭酸ガスリッチガスを得る還流式2段膜分離装システムを含むSNGの製造装置において、第1段膜分離装置の非透過ガスをLPG増熱するための増熱器を設けて、かつ第1段膜分離装置の透過ガスを第2段膜分離装置に送る供給ラインの途中に分岐させて副供給ラインを設けたことを特徴とする総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造装置。
【請求項7】脱硫器、改質器、第1段膜分離装置および第2段膜分離装置を有しかつ第1段膜分離装置の透過ガスを第2段膜分離装置に送る供給ラインの途中に分岐させて副供給ラインを設けたことを特徴とする還流式2段膜分離システム、並びに増熱器からなる総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造装置。
【請求項8】メタン化反応器をさらに備えている、請求項7に記載の総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造装置。
【請求項9】改質ガス等が改質ガスまたはメタン化ガスまたは改質ガスとメタン化ガスとの混合ガスである請求項6、7または8に記載の総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造装置。
【請求項10】第1段膜分離装置において透過係数比が13以上の膜を用いることを特徴とする請求項6、7、8または9に記載の総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造装置。
【請求項11】通常時におけるSNG中の炭酸ガス濃度が通常2.0以下であることを特徴とする請求項6、7、8、9または10に記載の総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造装置。

詳細な説明

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、SNG(代替天然ガスともいう)の製造方法および製造装置、特に、炭化水素原料を改質して得られる、メタンおよび炭酸ガスを含む改質ガス等からSNGを製造するための製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】都市ガスは、従来の石油系のものよりも環境汚染が少なく、しかも長期に渡って安定した価格で購入できる天然ガスに転換されつつあり、天然ガス基地を近郊に有する大都市圏ではこの転換が略完了しつつある。一方、中小都市圏は、近郊に天然ガス基地を持たない場合が多く、大都市圏のように天然ガスそのものを利用するのは困難であり、天然ガスに代わる代替ガスの利用が進められている。
【0003】ここで、天然ガスの代替ガスとしては、主として2種類のものがある。一つは、大都市圏近郊にある天然ガス基地から液化天然ガスをタンクローリー等により輸送して保冷タンクに蓄え、この液化天然ガスをガス化した後に液化プロパンガスを用いて高カロリー規格品に熱量調整したもの(以下、「LNG調整品」という)である。他方は、脱硫した石油系炭化水素を水蒸気改質することにより得られる、メタン、炭酸ガスおよび水素などを含む改質ガスを調製し、この改質ガスから燃焼阻害成分である炭酸ガスを分離して得られるメタンリッチガスを液化プロパンガス等を用いて高カロリー規格品に熱量調整したもの(以下、「SNG」あるいは「代替天然ガス」ともいう)である。
【0004】上述のような2種類の代替ガスのうち、前者のLNG調整品は、液化天然ガスの輸送コストが高額になり、安価に提供するのが困難な状況にある。このため、後者の代替天然ガスの利用が今後主流になるものと思われる。因みに、このような代替天然ガスは、中小都市圏のみならず、大都市圏においても、天然ガスの供給不足が生じた場合の補完燃料としての利用が期待されている。
【0005】ところで、上述のSNGは、還流式2段膜分離システムを備えた製造装置を用いて製造されている。この製造装置は、通常、改質ガス等を、メタンの含有割合が高められた第1段メタンリッチガス(非透過ガス)と、炭酸ガスの含有割合が高められた第1段炭酸ガスリッチガス(透過ガス)とに分離するための分離膜を有する第1段膜分離装置と、第1段メタンリッチガスを増熱して総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGを製造するための増熱器と、第1段炭酸ガスリッチガスを、メタンの含有割合が高められた第2段メタンリッチガス(非透過ガス)と炭酸ガスの含有割合がより高められた第2段炭酸ガスリッチガス(透過ガス)とにさらに分離するための第2段膜分離装置と、第1段膜分離装置により得られた第1段炭酸ガスリッチガスを第2段膜分離装置に供給するための供給ラインとを備えている(例えば、特開平9−310082号公報参照)。
【0006】この製造装置では、改質ガス等を第1段膜分離装置で処理することにより得られる、燃焼阻害成分である炭酸ガスの含有割合が少ない第1段メタンリッチガスを、例えば液化プロパンガス等を用いて増熱器において熱量調整すると、総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGが得られる。第1段膜分離装置において得られる第1段炭酸ガスリッチガスは、供給ラインを介して第2段膜分離装置により処理される。第2段膜分離装置において得られる第2段メタンリッチガスは、通常、第1段膜分離装置により処理される前の改質ガス等と混合され、SNGの製造用原料として還流される。一方、第2段膜分離装置において得られる第2段炭酸ガスリッチガスは、少量のメタンや水素を含むため、通常はSNGの製造用の燃料として有効に活用される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述のような総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNG(以下、単にSNGともいう。なお、特に断らない限り、「SNG」といえば、原則として総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGをいうものとする。)の製造装置において、第2段膜分離装置が使用不能の状態に陥った場合(非常時ともいう)、例えば、第2段膜分離装置のメンテナンスが必要な場合や、供給ラインのコンプレッサーに作動不良が生じた場合、第1段膜分離装置で生成した第1段炭酸ガスリッチガスを第2段膜分離装置に供給することができなくなる。この場合、第1段膜分離装置における第1段メタンリッチガスのメタン濃度が低下し、総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGを安定に製造し続けるのが困難になる。その結果、SNGの安定的な連続供給を確保するのが困難になる。
【0008】本発明が解決しようとする課題は、2段膜分離システムを採用したSNGの製造方法および製造装置について、例え第2段膜分離装置が使用できない状態に陥った場合であっても、すなわち非常時であっても、総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGを継続的に安定して製造できるようにし、ガスの安定供給という都市ガス事業者の責務を全うできるようにすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の製造方法は、総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造方法であり、改質ガス等を第1段膜分離装置に送り、非透過ガスとしてメタンリッチガス(第1段メタンリッチガスともいう)を得て、LPG増熱装置により増熱して総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGとする一方、第1段膜分離装置の透過ガス(第1段炭酸ガスリッチガスともいう)を第2段膜分離装置に送り、第2段膜分離装置の非透過ガス(第2段メタンリッチガスともいう)を還流させて改質ガス等と混合させ、この混合ガスを第1段膜分離装置に送り、第2段膜分離装置の透過ガス(第2段炭酸ガスリッチガスともいう)として炭酸ガスリッチガスを得る還流式2段膜分離システムを用いてSNGを製造する方法において、第2段膜分離装置が使用できない場合には、第1段膜分離装置の透過ガスを第2段膜分離装置へ送っていたのを切り替えて副供給ラインへ流す一方、第1段膜分離装置の非透過ガスをLPG増熱して総発熱量11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGを製造することを特徴としている。
【0010】この製造方法では、例えば、改質ガス等の一部を水添脱硫用のリサイクルガスに供することにより改質ガス等を得ることを特徴としている。また、この製造方法で用いられる改質ガス等は、例えば、改質ガスまたはメタン化ガスまたは改質ガスとメタン化ガスとの混合ガスである。さらに、この製造方法は、例えば、第1段膜分離装置において透過係数比が13以上の膜を用いることを特徴としている。さらに、この製造方法は、通常時、すなわち、第2段膜分離装置が使用可能状態の場合において製造される総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNG中の炭酸ガス濃度が通常2.0以下であることを特徴としている。
【0011】本発明の製造装置は、総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造装置であり、改質ガス等を第1段膜分離装置に送り、非透過ガスとしてメタンリッチガスを得る一方、第1段膜分離装置の透過ガスを第2段膜分離装置に送り、第2段膜分離装置の非透過ガスを還流させて改質ガス等と混合させ、この混合ガスを第1段膜分離装置に送り、第2段膜分離装置の透過ガスとして炭酸ガスリッチガスを得る還流式2段膜分離装システムを含むSNGの製造装置において、第1段膜分離装置の非透過ガスをLPG増熱するための増熱器を設けて、かつ第1段膜分離装置の透過ガスを第2段膜分離装置に送る供給ラインの途中に分岐させて副供給ラインを設けたことを特徴としている。
【0012】また、本発明に係る総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造装置は、脱硫器、改質器、第1段膜分離装置および第2段膜分離装置を有しかつ第1段膜分離装置の透過ガスを第2段膜分離装置に送る供給ラインの途中に分岐させて副供給ラインを設けたことを特徴とする還流式2段膜分離システム、並びに増熱器からなる。この製造装置は、例えば、メタン化反応器をさらに備えている。
【0013】これらの製造装置において、改質ガス等は、例えば、改質ガスまたはメタン化ガスまたは改質ガスとメタン化ガスとの混合ガスである。また、これらの製造装置は、例えば、第1段膜分離装置において透過係数比が13以上の膜を用いることを特徴としている。さらに、これらの製造装置は、通常時、すなわち第2段膜分離装置が使用可能な場合において製造される総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNG中の炭酸ガス濃度が通常2.0以下であることを特徴としている。
【0014】なお、本発明に係るSNGの製造装置は、例えば、次のように表現することもできる。
[1項]炭化水素原料を脱硫した後、改質して得られる、メタンおよび炭酸ガスを含む改質ガス等からSNGを製造するための製造装置であって、前記改質ガス等を、前記メタンの含有割合が高められた第1段メタンリッチガスと、前記炭酸ガスの含有割合が高められた第1段炭酸ガスリッチガスとに分離するための分離膜を有する第1段膜分離装置と、前記第1段メタンリッチガスを増熱して前記SNGを得るための増熱器と、前記第1段炭酸ガスリッチガスを、前記メタンの含有割合が高められた第2段メタンリッチガスと、前記炭酸ガスの含有割合がより高められた第2段炭酸ガスリッチガスとにさらに分離するための第2段膜分離装置と、前記第1段膜分離装置により得られた前記第1段炭酸ガスリッチガスを前記第2段膜分離装置に供給するための供給ラインと、前記第2段膜分離装置により得られた前記第2段メタンリッチガスを、前記改質ガスと混合するための還流ラインとを備え、前記供給ラインは、途中で前記第1段炭酸ガスリッチガスを前記第2段膜分離装置に供給するための主供給ラインと、前記第1段炭酸ガスリッチガスを前記第2段膜分離装置とは異なる他の系に供給するための副供給ラインとに分岐しており、前記第1段炭酸ガスリッチガスの流通方向を前記主供給ラインおよび前記副供給ラインのうちの一方に選択的に切替え可能に設定されている、SNGの製造装置。
【0015】[2項]前記第1段膜分離装置の前記分離膜は、前記炭酸ガスと前記メタンとの透過係数比(炭酸ガス/メタン)が少なくとも13である、1項に記載のSNGの製造装置。
【0016】[3項]前記SNGは総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格ガスである、1項または2項に記載のSNGの製造装置。
【0017】[4項]炭化水素原料を脱硫した後、改質してメタンおよび炭酸ガスを含む改質ガス等を調製するための改質ガス製造装置と、前記改質ガス等を、前記メタンの含有割合が高められた第1段メタンリッチガスと、前記炭酸ガスの含有割合が高められた第1段炭酸ガスリッチガスとに分離するための分離膜を有する第1段膜分離装置と、前記第1段メタンリッチガスを増熱して前記代替天然ガスを得るための増熱器と、前記第1段炭酸ガスリッチガスを、前記メタンの含有割合が高められた第2段メタンリッチガスと、前記炭酸ガスの含有割合がより高められた第2段炭酸ガスリッチガスとにさらに分離するための第2段膜分離装置と、前記第1段膜分離装置により得られた前記第1段炭酸ガスリッチガスを前記第2段膜分離装置に供給するための供給ラインと、前記第2段膜分離装置により得られた前記第2段メタンリッチガスを、前記改質ガス製造装置により調製された前記改質ガスと混合するための還流ラインとを備え、前記供給ラインは、前記第1段炭酸ガスリッチガスを前記第2段膜分離装置に供給するための主供給ラインと、前記第1段炭酸ガスリッチガスを前記第2段膜分離装置とは異なる他の系に供給するための副供給ラインとに分岐しており、前記第1段炭酸ガスリッチガスの流通方向を前記主供給ラインおよび前記副供給ラインのうちの一方に選択的に切替え可能に設定されている、SNGの製造装置。
【0018】1項および4項に記載の総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造装置では、第1段膜分離装置の分離膜により改質ガスが第1段メタンリッチガスと第1段炭酸ガスリッチガスとに分離される。これにより得られた第1段メタンリッチガスは、増熱器により増熱され、目的とする代替天然ガスになる。一方、第1段炭酸ガスリッチガスは、供給ラインの主供給ラインを通じて第2段膜分離装置に送られ、そこで第2段メタンリッチガスと第2段炭酸ガスリッチガスとに再度分離される。ここで得られた第2段メタンリッチガスは、還流ラインを通じて第1段膜分離装置により分離される前の改質ガス等に混合され、SNGの製造のために第1段膜分離装置に供給される。また、第2段炭酸ガスリッチガスは、例えば、本製造装置を動作させるために必要な燃料源として再利用され得る。
【0019】このようなSNGの製造装置において、例えば第2段膜分離装置が使用不能の状態に陥った場合、供給ラインにおいて第1段炭酸ガスリッチガスの流路を主供給ラインから副供給ラインに切替えると、第1段膜分離装置からの第1段炭酸ガスリッチガスは、第2段膜分離装置を経由せずに副供給ラインから排出される。これにより、第1段膜分離装置では、分離膜による改質ガス等の分離が継続され、第1段メタンリッチガスが安定に製造され続ける。この結果、増熱器では、SNGが安定的に連続生産されることになる。すなわち、このようなSNGの製造装置は、第1段膜分離装置からの第1段炭酸ガスリッチガスを第2段膜分離装置へ移送するための供給ラインが上述のような副供給ラインを有しているので、第2段膜分離装置が例え使用できない場合(非常時)であっても、総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGを継続的に安定して製造することができる。
【0020】なお、第1段膜分離装置において、分離膜の炭酸ガスとメタンとの透過係数比(炭酸ガス/メタン)が少なくとも13である場合は、第1段メタンリッチガス中のメタン濃度を十分に確保することができるので、より安定的にSNGを製造することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】図1に、本発明の実施の一形態に係る総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNG製造装置の概略構成を示す。図において、SNG製造装置1は、脱硫器5、改質器6、メタン化反応器7、還流式2段膜分離システム20および増熱器12を主に備えている。
【0022】脱硫器5は、SNGの製造原料となる炭化水素を導入するための原料供給ライン4が接続されており、炭化水素中に含まれる有機硫黄化合物を除去するためのものである。改質器6は、脱硫器5で処理された炭化水素を水蒸気改質するためのものである。メタン化反応器7は、改質器6において水蒸気改質されたガスをさらにメタン化処理するためのものである。通常は、改質器6とメタン化反応器7との間には、改質器6で水蒸気改質されたガスの一部を脱硫器5の前段において原料供給ライン4に還流させるための水素リサイクルライン8を備えている。
【0023】還流式2段膜分離システム20は、第1段膜分離装置9、第2段膜分離装置10および供給ライン9bを主に備えている。
【0024】第1段膜分離装置9は、メタン化反応器7に接続されており、当該メタン化反応器7からのメタン化ガス(改質ガス等の一例)を分離処理するための分離膜(図示せず)を内蔵している。この分離膜は、メタン化ガスを後述する第1段メタンリッチガスと第1段炭酸ガスリッチガスとに分離するためのものである。また、第1段膜分離装置9は、第1段メタンリッチガスを排出するための排出ライン9aを有している。
【0025】この第1段膜分離装置9で用いられる分離膜は、炭酸ガスを選択的に透過させ得る特性を有するもの、すなわち、炭酸ガスを透過させ易く、メタンガスを透過させ難い特性を有するものである。このような分離膜は、材質や形状が特に限定されるものではないが、通常、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、セルロース、アセテート、ポリスルホン、ポリビニルアセテートまたはカルド型ポリマーなどを用いて形成された中空糸膜からなるのが好ましい。
【0026】また、この分離膜は、炭酸ガスとメタンとの透過係数比(炭酸ガス/メタン)が少なくとも13、すなわち13以上のものが好ましい。この透過係数比が13未満の場合は、非常時の場合に第1段メタンリッチガス中のメタン濃度が低下し、安定的にかつ効率的に総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGを連続生産するのが困難になる場合がある。なお、当該透過係数比のより好ましい範囲は少なくとも15、より好ましい範囲は少なくとも18、さらに好ましい範囲は少なくとも20である。
【0027】第2段膜分離装置10は、供給ライン9bを介して第1段膜分離装置9に接続されており、第1段膜分離装置9からの第1段炭酸ガスリッチガスを分離するための分離膜(図示せず)を内蔵している。この分離膜は、例えば第1段膜分離装置9に内臓されているものと同様のものであり、第1段炭酸ガスリッチガスを後述する第2段メタンリッチガスと第2段炭酸ガスリッチガスとにさらに分離するためのものである。また、第2段膜分離装置10は、第2段メタンリッチガスを再利用するための還流ライン10aを有している。この還流ライン10aは、メタン化反応器7と第1段膜分離装置9との間に接続している。さらに、第2段膜分離装置10は、第2段炭酸ガスリッチガスを排出するための排出路10bを有している。
【0028】供給ライン9bは、第1段膜分離装置9と第2段膜分離装置10とを接続するためのものであり、主供給ライン9cと副供給ライン9dの2つに分岐している。主供給ライン9cは、第1バルブ13とコンプレッサー15とを有しており、第2段膜分離装置10に接続している。一方、副供給ライン9dは、第2バルブ14を有しており、第2段膜分離装置10からの排出路10bに接続している。
【0029】増熱器12(LPG増熱装置の一例)は、第1段膜分離装置9からの第1段メタンリッチガスを増熱して総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGを製造するためのものであり、第1段膜分離装置9からの排出ライン9aおよび原料供給ライン4から分岐された増熱LPG供給ライン4aが接続されている。
【0030】次に、上述のSNG製造装置1を用いた、総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGの製造方法を説明する。このSNG製造装置1では、脱硫器5、改質器6およびメタン化反応器7により炭化水素を改質ガス等(ここではメタン化ガス)に変換し、この改質ガス等を還流式2段膜分離システム20に供給し、さらに還流式2段膜分離システム20において第1段メタンリッチガスを得て増熱器12で増熱することによりSNGを製造する。SNG製造装置1では、通常、還流式2段膜分離システム20の供給ライン9bにおいて、第1バルブ13が開放されかつ第2バルブ14が閉鎖されている。
【0031】SNGを製造するに際しては、先ず、原料供給ライン4に製造原料となる炭化水素(例えば、液化プロパンガス(LPG))が供給される。原料供給ライン4に供給された炭化水素は、図示しない熱交換器により加熱され、脱硫器5における水素脱硫反応に適した温度(通常は300〜420℃、好ましくは350〜400℃、より好ましくは370〜390℃)に設定される。この際、炭化水素には、図示しないガス供給ラインから供給される水添用ガスが予め混合される。
【0032】このようにして温度調整されかつ水添用ガスが混合されて脱硫器5内に導かれた炭化水素中に含まれる有機硫黄化合物は、脱硫器5内に配置された水添用触媒上で水添用ガス中に含まれる水素と反応して硫化水素になる。この硫化水素は、同じく脱硫器5内に配置された酸化亜鉛触媒に吸着される。これにより、炭化水素は、それに含まれる有機硫黄化合物が所定濃度以下まで低減される、すなわち脱硫されることになる。
【0033】このようにして脱硫された炭化水素は、次に改質器6に送られる。この際、炭化水素には、予め水蒸気供給ラインから水蒸気が混合される。改質器6において、水蒸気が混合された炭化水素は、所定温度(通常、50〜600℃程度、好ましくは400〜550℃程度、より好ましくは450〜500℃程度)に加熱され、水蒸気改質される。この結果、炭化水素は、主としてメタン、一酸化炭素、炭酸ガス、水素および水蒸気を含む改質ガスに変換される。
【0034】なお、このようにして得られた改質ガスは、十分な量の水素を含むため、水素リサイクルライン8を経由して一部を脱硫器5の前段にリサイクルさせると、上述の水添用ガスとして活用することができる。
【0035】次に、得られた改質ガスは、メタン化反応器7内に導入される。メタン化反応器7内において、改質ガス中に含まれる一酸化炭素および炭酸ガスの一部が公知のメタン化反応触媒上で水素と反応してメタンになる。この結果、改質ガスは、中のメタン濃度が高められ、メタン化ガスになる。
【0036】このようなメタン化反応器7内におけるメタン化工程は、温度が低い程進行し易いので、通常は改質器6からの改質ガスに対して水を供給し、当該改質ガスの温度を低下させる。因みに、改質ガスの温度は、通常、メタン化反応器7の出口温度が200〜500℃程度、好ましくは250〜400℃程度、より好ましくは250〜320℃程度になるよう設定する。この設定温度が200℃未満の場合は、メタン化反応が起こりにくくなり、改質ガス中のメタン濃度を十分に高めるのが困難になる場合がある。逆に、500℃を超える場合は、メタン化が進行しにくくなる一方でメタン化反応触媒が劣化しやすくなり、不経済である。
【0037】このようにして製造されたメタン化ガスは、通常、図示しない乾燥器により除湿される。乾燥器は、メタン化ガスに対して冷却または加熱処理を施すことにより、メタン化ガスを除湿する。なお、メタン化ガスがこのような除湿処理されない場合は、後述する還流式2段膜分離システム20の第1段膜分離装置9において、メタン化ガス中に含まれる水分が分離膜の表面に凝縮して付着し、当該分離膜の分離性能に悪影響を与える場合がある。
【0038】メタン化ガスは、次に還流式2段膜分離システム20および増熱器12により総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGに変換される。ここでは、先ず、メタン化ガスが第1段膜分離装置9内に導入される。第1段膜分離装置9内において、メタン化ガスは、分離膜を透過したガス成分と分離膜を透過しないガス成分とに分離される。ここでは、上述のように分離膜がメタンよりも炭酸ガスを透過させ易く設定されているため、メタン化ガスに含まれる炭酸ガスの大部分は分離膜を透過するが、メタン化ガスに含まれるメタンの大部分は分離膜を透過しない。このため、この第1段膜分離装置9において、メタン化ガスは、メタンの含有割合が高められた(すなわち、炭酸ガスの大部分が除去された)第1段メタンリッチガス(すなわち、非透過ガス)と、炭酸ガスの含有割合が高められた(すなわち、メタンの大部分が除去された)第1段炭酸ガスリッチガス(すなわち、透過ガス)との2つのガスに分離されることになる。
【0039】このようにして第1段膜分離装置9において得られた第1段メタンリッチガスは、第1段膜分離装置9から排出ライン9aを流れて増熱器12に送られ、そこで増熱LPG供給ライン4aからのLPGが混合されて増熱される。これにより、増熱器12では、第1段メタンリッチガスから総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGが製造される。因みに、ここで得られるSNGは、第1段膜分離装置9で用いられる分離膜の透過係数比が上述のように設定されているため、燃焼阻害成分である炭酸ガスの濃度が通常2.0以下である。なお、この炭酸ガス濃度は、分離膜の透過係数比を高めた場合、1.5以下にすることも可能である。
【0040】一方、第1段膜分離装置9において得られた第1段炭酸ガスリッチガスは、第1段膜分離装置9から供給ライン9bに送られ、コンプレッサー15により圧送されながら主供給ライン9cを通って第2段膜分離装置10内に導入される。第2段膜分離装置10において、第1段炭酸ガスリッチガスは、分離膜を透過したガス成分と分離膜を透過しないガス成分とに再度分離される。ここでは、上述のように分離膜がメタンよりも炭酸ガスを透過させ易く設定されているため、第1段炭酸ガスリッチガスの大部分を占める炭酸ガスの大部分は分離膜を透過するが、第1段炭酸ガスリッチガスに含まれる少量のメタンの大部分は分離膜を透過しない。このため、この第2段膜分離装置10において、第1段炭酸ガスリッチガスは、メタンの含有割合が高められた(すなわち、炭酸ガスの大部分が除去された)第2段メタンリッチガス(すなわち、非透過ガス)と、炭酸ガスの含有割合がより高められた(すなわち、メタンがさらに除去された)第2段炭酸ガスリッチガス(すなわち、透過ガス)との2つのガスに分離されることになる。
【0041】このようにして第2段膜分離装置10において得られた第2段メタンリッチガスは、還流ライン10aを通ってメタン化反応器7からのメタン化ガス(改質ガス等の一例)に混合された後、再度第1段膜分離装置9内に導入される。一方、第2段炭酸ガスリッチガスは、排出路10bを通って外部に排出される。排出路10bから排出された第2段炭酸ガスリッチガスは、メタンあるいは水素を含んでいるため、SNG製造装置1を駆動するための燃料、例えば、脱硫器5内に導入される炭化水素を加熱するための燃料等として有効に再利用され得る。
【0042】SNG製造装置1における上述のようなSNGの製造過程において、■コンプレッサー15の故障のために第1段膜分離装置9からの第1段炭酸ガスリッチガスを第2段膜分離装置10に供給することが出来ない場合、■第2段膜分離装置10そのものまたはその分離膜の交換が必要なために第2段膜分離装置10を使用出来ない場合、または■都市ガス需要が減少する夜間において、SNG製造装置1を所謂ホットスタンバイ状態(SNG製造装置1を加熱状態に設定したままSNGの製造を一時的に停止する状態)に設定した後に再始動を試みた際にコンプレッサー15等の作動不良が生じ、第1段膜分離装置9からの第1段炭酸ガスリッチガスを第2段膜分離装置10に向けて送ることができなくなった場合などの、第2段膜分離装置10が使用不能の非常時(単に非常時ともいう)においては、供給ライン9bにおいて第1バルブ13を閉鎖すると共に第2バルブ14を開放する。これにより、第1段膜分離装置9からの第1段炭酸ガスリッチガスは、供給ライン9bの副供給ライン9dを通って第2段膜分離装置10からの排出路10b内に流れ、第2段膜分離装置10を経由せずにSNG製造装置1において燃料として再利用されるか、あるいは外部に排出される。なお、上記において、第1段炭酸ガスリッチガスは、必ずしも排出路10b内に流れなくてもよく、副供給ライン9dを通った後、別の経路を通って燃料として再利用等されればよい。
【0043】このような非常時の場合、第1段膜分離装置9においては、副供給ライン9dにより第1段炭酸ガスリッチガスの排出が確保されるため、第2段膜分離装置10が使用不能状態であるにも拘わらず、引き続き改質ガスを分離して第1段メタンリッチガス中のメタンを高濃度に維持し続けることができる。このため、増熱器12は、第1段膜分離装置9からメタン濃度の高い第1段メタンリッチガスが供給され続けることになるので、総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGを継続的に安定して製造し続けることができる。
【0044】すなわち、第1段膜分離装置9は、上述のような透過係数比の分離膜を用いているので、第1段メタンリッチガス中のメタン濃度をSNGの製造に適した濃度範囲に維持することができる(すなわち、第1段メタンリッチガス中の炭酸ガス濃度を抑制することができる)。このため、増熱器12においては、例え上述のような非常時であっても、Wobbe指数が所定範囲(12,600〜13,800)でありかつ燃焼速度Mcpが所定範囲(35.0〜47.0)内にある、総発熱量が11,000Kcal/Nm3に設定された13A規格のSNGを安定して製造することができる。このため、都市ガス事業者は、このSNG製造装置1を用いた場合、第2段膜分離装置10が使用不能状態に陥った場合(すなわち非常時)であっても、ガス事業法に定められた都市ガスの安定供給責務を達成することができる。
【0045】また、第1段膜分離装置9では、上述のような分離膜を用いているために、第1段メタンリッチガスの生成量に比べて第1段炭酸ガスリッチガスの生成量を少なくできる。このため、第1段膜分離装置9から排出される第1段炭酸ガスリッチガスは、SNG製造装置1内で消費可能な量に抑制されることになり、SNG製造装置1の系外に余剰ガスとして排出する必要性が少なくなる。なお、第1段膜分離装置9において透過係数比を大きくすれば、SNG製造装置1の系外に余剰ガスとして排出しないようにすることができる。
【0046】なお、上述の非常時状態が解消され、第2段膜分離装置10が使用可能状態に復帰した場合、第1バルブ13を開放しかつ第2バルブ14を閉鎖して第1段膜分離装置9からの第1段メタンリッチガスが主供給ライン9cを経由して第2段膜分離装置10へ再度送られるように設定すると、通常のSNG製造工程が再開される。
【0047】[他の実施の形態]
(1)上述の実施の形態では、SNG製造装置1がメタン化反応器7を備えている場合、すなわち、改質ガス等がメタン化ガスである場合について説明したが、メタン化反応器7を省略した場合、すなわち、改質器6からの改質ガスをそのまま代替天然ガス製造装置3に導入するように構成した場合も本発明を同様に実施することができる。また、メタン化反応器7からのメタン化ガスと、改質器6からの改質ガスとを混合したガスを改質ガス等として用い、当該改質ガス等を還流式2段膜分離システム20に導入するように構成した場合も本発明を同様に実施することができる。
【0048】(2)上述の実施の形態では、供給ライン9bにおいて主供給ライン9cと副供給ライン9dとの選択を第1バルブ13および第2バルブ14の2つのバルブの操作により実施したが、主供給ライン9cと副供給ライン9dとの接続部に三方バルブを配置して主供給ライン9cと副供給ライン9dとを選択するように構成した場合も本発明を同様に実施することができる。
【0049】(3)上述の実施の形態では、SNGの製造原料である炭化水素としてLPGを用いた場合について説明したが、LPGに代えてナフサなどの他の原料を用いた場合も本発明を同様に実施することができる。ただし、増熱LPG供給ライン4aを通じて増熱器12には、LPGを供給することはいうまでもない。この場合、増熱LPG供給ライン4aは、原料供給ライン4から分岐させるのではなく、別途設置したLPG供給源からLPGを供給するように設定する。
【0050】
【実施例】実施例1上述の実施の形態に係るSNG製造装置1において、メタン化反応器7を取り外し、改質器6からの改質ガス(改質ガス等の一例)が直接に第1段膜分離装置9に導入されるように設定した。この際、第1段膜分離装置9の分離膜として炭酸ガス/メタンの透過係数比が20のものを用いた。そして、第1バルブ13を閉鎖しかつ第2バルブ14を開放して第2段膜分離装置10が使用不能の状態(以下、非常時あるいは非常状態という)に設定し、原料として液化プロパンガスを用いてSNGを製造した。SNGの製造過程において製造された改質ガス、第1段メタンリッチガスおよび第1段炭酸ガスリッチガスの組成、並びに製造されたSNGの組成を表1に示す。
【0051】
【表1】


【0052】得られたSNGは、総発熱量が11,000Kcal/Nm3、Wobbe指数が12,690、燃焼速度Mcpが36.8であり、13A規格を満たしていた。これより、この実施例の場合は、第2段膜分離装置10が使用できない場合(非常時)であっても、継続的に安定して総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGを製造できることがわかる。なお、第1段膜分離装置9から排出される第1段炭酸ガスリッチガスは、SNG製造装置1の系外に余剰ガスとして排出することなくSNGプラント用の燃料とすることができた。
【0053】比較例1実施例1において、第1段膜分離装置9の分離膜を炭酸ガス/メタンの透過係数比が10のものに変更した。そして、実施例1の場合と同様に、非常状態でSNGを製造した。SNGの製造過程において製造された改質ガス、第1段メタンリッチガスおよび第1段炭酸ガスリッチガス、並びに製造されたSNGの組成を表2に示す。
【0054】
【表2】


【0055】得られたSNGは、総発熱量が11,000Kcal/Nm3、Wobbe指数が12,220、燃焼速度Mcpが35.1であり、Wobbe指数が13A規格を満たしていなかった。
【0056】実施例2メタン化反応器7を備えかつ第1段膜分離装置9の分離膜として炭酸ガス/メタンの透過係数比が20のものを用いた上述の実施の形態に係るSNG製造装置1を用い、非常状態でSNGを製造した。SNGの製造過程において製造されたメタン化ガス、第1段メタンリッチガスおよび第1段炭酸ガスリッチガスの組成、並びに製造されたSNGの組成を表3に示す。
【0057】
【表3】


【0058】得られたSNGは、総発熱量が11,000Kcal/Nm3、Wobbe指数が12,620、燃焼速度Mcpが36.9であり、13A規格を満たしていた。なお、第1段膜分離装置9から排出される第1段炭酸ガスリッチガスは、SNG製造装置1の系外に余剰ガスとして排出することなく、SNGプラント用の燃料とすることができた。
【0059】比較例2実施例2において、第1段膜分離装置9の分離膜を炭酸ガス/メタンの透過数比が10のものに変更した。そして、実施例2の場合と同様に、非常状態でSNGを製造した。SNGの製造過程において製造されたメタン化ガス、第1段メタンリッチガスおよび第1段炭酸ガスリッチガス、並びに製造されたSNGの組成を表4に示す。
【0060】
【表4】


【0061】得られたSNGは、総発熱量が11,000Kcal/Nm3、Wobbe指数が12,790、燃焼速度Mcpが34.7であり、燃焼速度が13A規格を満たしていなかった。
【0062】実施例3実施例1において、第1バルブ13を開放しかつ第2バルブ14を閉鎖して第2段膜分離装置10が使用可能の状態(通常状態)に設定し、SNGを製造した。この際、コンプレッサー15による第1段炭酸ガスリッチガスの移送圧を7.5kg/cm2Gに設定した。SNGの製造過程において調製された改質ガス、第1段メタンリッチガス、第1段炭酸ガスリッチガス、第2段メタンリッチガスおよび第2段炭酸ガスリッチガスの組成、並びに製造されたSNGの組成を表5に示す。
【0063】
【表5】


【0064】得られたSNGは、総発熱量が11,000Kcal/Nm3、Wobbe指数が13,250、燃焼速度Mcpが39.8であり、13A規格を満たしていた。
【0065】実施例4実施例2において、第1バルブ13を開放しかつ第2バルブ14を閉鎖して第2段膜分離装置10が使用可能の状態(通常状態)に設定し、SNGを製造した。この際、コンプレッサー15による第1段炭酸ガスリッチガスの移送圧を7.5kg/cm2Gに設定した。SNGの製造過程において調製されたメタン化ガス、第1段メタンリッチガス、第1段炭酸ガスリッチガス、第2段メタンリッチガスおよび第2段炭酸ガスリッチガスの組成、並びに製造されたSNGの組成を表6に示す。
【0066】
【表6】


【0067】得られたSNGは、総発熱量が11,000Kcal/Nm3、Wobbe指数が13,270、燃焼速度Mcpが40.2であり、13A規格を満たしていた。
【0068】
【発明の効果】本発明に係るSNGの製造方法は、第2段膜分離装置が使用不能の状態に陥った場合に、第1段膜分離装置からの透過ガス、すなわち第1段炭酸ガスリッチガスを第2段膜分離装置へ送らずに副供給ラインへ流しているので、例え第2段膜分離装置が使用不能の場合(非常時)であっても、総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGを継続的に安定して製造することができ、ガスの安定供給という都市ガス事業者の責務を全うすることができる。
【0069】また、本発明に係るSNGの製造装置は、第1段膜分離装置からの透過ガス、すなわち第1段炭酸ガスリッチガスを第2段膜分離装置へ移送するための供給ラインが上述のような副供給ラインを有しているので、例え第2段膜分離装置が使用不能の場合(非常時)であっても、総発熱量が11,000Kcal/Nm3の13A規格のSNGを継続的に安定して製造することができ、ガスの安定供給という都市ガス事業者の責務を全うすることができる。

 

 

 

トップページへ

 

          特許事務所 富士山会
          代表者 弁理士 佐藤富徳
   電話  0120−149−331
   ファックス  0120−149−332
   メールアドレス fuji3kai@sweet.ocn.ne.jp

 

このページのトップへ

 

トップページへ

 


Copyright(C) 2005 FUJISANKAI.All Rights Reserved.